人生ぴよぴよ

メンヘラが社会復帰目指す

この世の果ての花火

さいころ父親に連れられて花火大会に行った。あまりにも大きな音に驚いたし、爆弾みたいで怖かった。それから花火はずっと苦手で何年もまとも見ていなかった。

父親の実家はまあド田舎で陰湿であんまり好きじゃない。携帯の電波が入らない。和菓子しか出てこない。廊下は暗くて冷たい。階段は急で怖い。家のどこかに幽霊がいても不思議ではない。

いつも父親の運転で祖父母の家の近くまで行く。海の近くに車を停める。たまにクラゲが死んでいて、気づかず踏んでしまうとウワってなる。全然車の通らない道路を渡って、細い道に入ると迷路のように入り組んでいる。途中でお墓の前を通る。家について、仏壇にお線香をあげて、ちらっと横をみると井戸がある。

何もかも苦手だった。所謂怪談話に登場するような怖いものがたくさん詰まっている。ただ、私の根っこにあるのはそういう景色への憧れとか畏怖とかだと思う。さすがに「○○をしたら死後の世界に引き込まれる」みたいなのを信じてはいけないけど、裏を返せばご先祖様を粗略に扱わないように、っていうだけのこと。

なんて無駄なことばかりなんだろう、と思っていた田舎が、実は人の感情に合わせて積み上げた理屈で成り立っていた。感情的なんじゃなくて、理屈っぽかった。感情に合わせて作り上げた理屈は崩れない。よくできている。みんなが大事にする理由があるし、なんかとにかく色々ある。

 

こんなこと言うの良くないけど人間はいつか死ぬ。親戚は減っていく。人数が多くてめんどくさいなあみんな鬱陶しいなあって思っていたけど、数が減った上に生き残ってる人たちも年取って外に出るのを嫌がるからなかなか集まらない。仕方ないからって自分から会いにいってみたり電話をかけたり手紙を書いたりするとめちゃくちゃ喜ぶから、めんどくさいって文句言いながら続ける。こうやって父の田舎の習慣は受け継がれてきたのかなって思う。何年も前に見た夏の景色、同じものを今年の夏も見ることができるかもしれない。