人生ぴよぴよ

メンヘラが社会復帰目指す

むごい人生

ツァラストラはかく語りき、「むごい人生よ、それでももう一度」。最近この言葉の意味がわかる。

 

私の家の前の道には何十本も金木犀の木が植えられている。誰かがTwitterに書いていた。「金木犀ってこんなに強い香りなんだ」って。私は小さいころからずっと知っていた。初夏になるとうるさいくらいに鳴くセミセミが鳴き終わるのを待たずに鈴虫が鳴き始め、ああもう秋だなと考えていると金木犀が咲き始める。金木犀はあっという間に満開になり、肺いっぱいにその香りを吸い込むことになる。ヘビースモーカーの父親はよく言う。この季節はタバコの煙よりも金木犀そのものを吸い込んでいるようだ、と。そうかもしれない。

今年はやけ金木犀に言及するツイートを多く見て、それと同時に金木犀の香りでしか情緒を感じることができないのか、というツイートもたくさん見た。なんだか悲しかった。

私の部屋の窓から見える一番大きな木は桜の木だ。咲くのが毎年早いように思う。近所の小学生がそこを通るころには散ってしまっている。私は家にいることが多いから、桜が咲いて散るまでをよく見ている。

夏にはうるさいくらいにセミがよく鳴く。朝から夜までずっと、いろんな種類のセミ。カブトムシやクワガタもよく獲れる。

秋は上に書いたとおり、金木犀がたくさん咲く。満開の様子も綺麗だし良い香りだけど、雨が降って一斉に散ったあとの地面は金木犀の絨毯みたいでとても綺麗。それが一番好き、秋が終わったと実感するし、今年も生き抜いたと自分を褒めたくなる。

春夏秋を感じるものはたくさんあるけど冬を感じるようなものはあまりない。雪は降っても積もらないし、ただ家で炬燵に潜ってアイスを食べて過ごしていると気づけば年が変わって、また桜が咲く。その繰り返し。

 

私は金木犀の香りがこの一年で嗅ぐ香りのできるもので一番好き。金木犀の花も好き。うちの周りに咲く百合よりも、よくわからないキノコよりも、金木犀が一番好き。

私は生まれを呪うことがよくある。もっとお金持ちだったら、お兄ちゃんがいなかったら、最初の職場を辞めなかったら。むごい人生だけど、こんなにむせ返るような金木犀の香りを知らずに死ぬのは嫌だと思った。初夏秋、そしてよくわからない冬、多少なりとも情緒を理解できる自分の生活が好きだ。私はもう一度私の一年間を繰り返したい。かく語らん、それでももう一度。